あごひげさんへ 4

森川先輩よりメール

「タオ……老子」:鹿島祥造:筑摩書房
いつも『自分』で
いること


むかしは、
タオ(道)をよく体得した人がいて
そのありさまは、神秘的で暗く、遠く、
すべてに通じているようで
どうにも測りようのない深さだった。


こういう人物を言葉で描こうとすると、
比喩的な言い方をするほかない。

その慎重な態度は、危険な冬の川を渡る人のようだ。
用心ぶかいさまは、見知らぬ森を通る人のようだ。
落ち着いて油断のないさまは、
よその家を訪ねたお客みたいでありそれでいて、
人と交わるさまは、氷がとけてゆくようななめらかさだ。


その素朴な様子は、
山から伐りだしたばかりの白木のようだし、
こころの広やかさは、大きな岩を思わせる。
とにかく取りとめなくて、
その点では濁った水みたいであり濁ったままゆったり
しているから、いつしか澄んでくる…
そういう在り方なんだ。


安らかにくつろいでいるくせに、
いつの間にか動いている、
そしてなにかを生み出している。
こういう人だから無理をしないんだ、
タオ(道)を身につけた人というのは消耗しない。
消耗しないから古いものをいつしか新しいものにしてゆく。
いつも「自分」でいられて新しい変化に応じられるのさ。


(森川先輩より)


老子は2500年前に中国にいた人とされている。
彼の思想が20世紀のはじめに、欧米社会によみがえった。
Zen(禅)とTao(道)は西洋の知識人の間に
深く受け入れられて、いまもそれがつづいている。
このタオイズムの波が、「老子」の原文や和文を
読んでも分からず、「老子」とは理解できないものと
決めこんでいた作者(鹿島祥造)に達し、
西洋文化によみがえった「老子」を英語からキャッチし、
「タオ……老子」として発表し
た。



タオとは・・・

タオとは道のことで、日本語に入って道(ドウ)と
発音され、道中、柔道、茶道などとつかわれている。
英語でTaoと書かれるとそれは「老子の教える道」と
「道教」の意味だけに使われている。
このTaoはZenとともに独、仏、その他の諸国でも
同じように使われ国際語になっている。