武士道8−1
武士道における誠 1

「誠」「名誉」「忠義」は武士道において至高の徳であり、サムライの心髄ともいえる徳であった。

武士道では慇懃無礼との言葉もあるように、そこに心がなければ、いかに形があったとしても「礼」とは認めなかった。なぜなら、それは武士道が最も崇高なる徳と認じた「誠」がないからである。

「誠は天の道なり。誠を思うは人の道なり。至誠にして動かざる者は、未だこれあらざるなり。誠ならずして、未だよく動く者はあらざるなり」
:孟子

誠という字は「言ったことを成す」という行動規範そのものを表す言葉であり、それゆえに武士は、いったん「イエス」と承諾すれば、命に代えてもそれを実行しなければならず、ここから「武士に二言はない」という言葉が生まれてきたのである。
したがって武士は、その対極にある「嘘つき」や「不誠実な者」を、人間として最も卑しき者として厳しく嫌った。「嘘つき」や「卑怯者」は、自分の目先の利益で動くため、たんに周囲の者に迷惑を及ぼすだけでなく、ひいては社会の混乱を招く元凶となるからだ。

わが日本では孟子の性善説が深く浸透し、さらにその上に武士道の心髄ともいえる「誠」があったために、契約といった概念はなく、「口約束」だけで十分事は足りた。

いま、なぜ「武士道」か  岬龍一郎 致知出版社