子育て
忙しいお父さん

現在の我が国の父親は、家庭にいる時間が少なく、子どものこととなると、母親の援助者としての役割を演ずるよりほかに致し方ないというのが現状でしょう。昔の父親は、家事や育児のすべてを母親にまかせました。その代わり、外でのことは一切、妻には言わないという型がありました。子どもから見て昔の父親は「雷」でした。子どもにとっては寄りつきにくい威厳がありました。それだけに親しみを感じにくい存在でした。
最近の多くの父親は、やさしい父親になり、子どもにとって親しみを感ずることのできる存在になってきたのはたしかですが、いかにも頼りないイメージになっているのではないでしょうか?
母親よりも父親を慕うという子どもも増加しています。これは母親のようにしつけを急がずに、子どもと遊ぶことが多いからで、遊びがいかに親子の親密さと関係しているかがわかります。鬼母の増加とともに慈父が現れたと言えましょう。しかしパパがババ的ともなってしまった面があります。子どもに気力や耐える力を養うためには、父親の力が必要です。昔から「胸を貸す」という言葉がありますが、力士の例にたとえて、からだをぶつけさせてころがしてやることを言ったのです。
獅子でいえば、子どもを谷底へ突き落として、自分で這い上がるまで待っている姿勢が大切です。
ですから、相撲の相手をしてもかんたんに負けるようなことをせずに、あるときは投げ飛ばすとか、ジャングルジムでも高いところまで登れるように励ますとか、車で行かず電車で行ったり、林の中に探検に行くとか、子どもの氣力を養うための担い手になって欲しいのです。
「かわいい子には旅をさせよ」
とは、この点を適切に表現しています。それは、母親にはなかなか実現しにくい役割です。

けんかを忘れた子どもたち:平井信義:PHP文庫